唯一の温かい癒しを提供してくれる この風呂で
風に乱され はねる髪に たっぷりのシャンプーを塗ったくり
白い泡が黒を目立たせないぐらいになった時 やっと気付いた お前の存在
小さな小さな蝿が、すぐ傍の壁に止まっていて
それが餓鬼みたいな私の心をくすぐった
髪を包み込む たくさんの泡を そぎ取り
蝿に投げつけて遊んだ
細かく散って壁に当たり 蝿は運良く それを避けた
悔しくないけど 遊ぶ私は もっと泡を投げつけてやった
蝿の周囲の無数の泡の山が 壁を伝って垂れてきて
行き場を失った蝿が とうとう泡に触れた
瞬間に 蝿は体を震わしながら 千鳥足のように壁を這った
逃げ惑う蝿を見て 心が笑う私
蝿にとっては急ぎ足 でも泡は すぐ背後
もう あと数ミリ
ニヤけながら見守る私の腕に 何故か鳥肌が立った
あ…
蝿は雪崩に呑み込まれ 命を絶った
どうしてだろうか とても怖い
たかが蝿の命なんぞ お前がそこにいるのが悪いというのに
私は すぐにシャワーで壁を流した
私が命を奪った事実を 汚らしい排水溝に流したんだ
10分後には そんな恐怖を忘れられるように
例えば 人を殺してしまった時 私は どうなってしまうのだろうか
例えば 人を殺してしまう時 私は どうなってしまっているのだろうか
ほら 10分経った今でも お前の死が私を捕らえて離さない
fin.
H18.10.20
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posted by 水木 美月 at 20:26|
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